[レポート] 生成AIの理解と組織への導入のポイント #AWSreInvent #TNC214

[レポート] 生成AIの理解と組織への導入のポイント #AWSreInvent #TNC214

re:Invent 2023で行われたBreakOutセッション Generative AI for decision-makers(TNC214)のセッションレポートとなります。
Clock Icon2023.12.28

はじめに

ネクストモードの南です。

re:Invent 2023で行われたBreakOutセッションGenerative AI for decision-makers(TNC214)のセッションレポートをお届けします。

セッション概要

Generative AI is commanding a lot of attention this year. This session introduces generative AI, the use cases that can benefit from the application of generative AI, and the benefits and risks of this emerging technology. Explore AWS services that you can use to build generative AI applications.

今年は生成AIが注目を集めています。本セッションでは、生成AI、生成AIの適用がもたらすユースケース、この新しいテクノロジーのメリットとリスクをご紹介します。生成AIアプリケーションを構築するために利用できるAWSサービスをご紹介します。

セッション動画

セッション動画はYoutubeで公開されてます。

見どころ

本セッションは以下のような生成AIを自組織に導入しようとしている経営層やマネジメント層をターゲットにしています。生成AIの基礎的な内容やユースケースも交えながら解説がされるので、事前知識がなくても理解しやすい内容になっています。

  • 生成AIをどのようにビジネスに取り入れることができるかを理解したい
  • プロジェクトを立ち上げようとしていて、生成AIに関する見識が欲しい
  • 従業員や自分自身のスキルアップを考えている

レポート内容

以下がセッションのアジェンダとなります。
生成AIの紹介、ビジネスにおけるユースケース、技術的基礎と用語の説明から始め、生成AI関連のプロジェクトを計画する際の注意点、リスク評価と軽減策、そして生成AIを導入する組織についても解説する、という内容になっています。

Module1: Introduction to generative AI

最初のパートでは生成AIとビジネスにおけるユースケースが紹介されます。
はじめに人工知能(AI)、機械学習(ML)、ディープラーニング、生成AIの分類について解説されます。

  • 人工知能:人間の思考や行動、推論、タスクを実行できるシステム
  • 機械学習:データからパターンを学んでモデル化し、新しいデータに対して予測ができる
  • ディープラーニング:機械学習の一種で、人工ニューラルネットワークにより複雑な問題に対処できる
  • 生成AI:ディープラーニングのサブセットで、より大規模なデータセットで訓練され、同じAIモデルを複数のタスクに適用できる

生成AIの一般的なユースケースが紹介されます。
生成AIは顧客体験の向上、生産性の向上、コスト削減などの様々な分野で活用されています。具体的には、パーソナライズされたバーチャルアシスタントが顧客体験を向上させたり、コールセンターのアシスタントとして業務をサポートしたりします。他にも情報検索やコンテンツ制作、ビジネスオペレーションなどにも活用されています。

また、具体的な業界におけるユースケースも紹介されます。

  • ヘルスケア:患者と医療関係者の会話を分析し、臨床ノートを自動生成する
  • ライフサイエンス:創薬の進歩を促進し、新しい治療法を開発する
  • 金融サービス:不正検出のメカニズムを強化し、犯罪組織を特定する
  • 小売業:バーチャルトライアルや商品レビューの要約を提供する
  • エンターテイメント:コンテンツ生成を強化し、創造的なプロセスを加速させる

AWSの生成AI関連のサービスについても紹介されます。

  • Compute:GPUインスタンス、ディープラーニング用のハードウェアアクセラレータなどの提供
  • Amazon SageMaker:データの前処理、モデルの構築・トレーニング、デプロイを行うマネージドサービス
  • Amazon Bedrock:Amazonやサードパーティの基盤モデルにAPIを通じてアクセスできるマネージドサービス

Module2: Technical foundations and terminology

ここからは生成AIに関連する技術的な要素と用語について解説されます。
AIの基盤モデル(Fundation models、FM)とは、大規模なデータを用いて何十億ものパラメーターで訓練されたAIモデルです。特定のユースケースに焦点を絞ることなく幅広いタスクに適応可能で、コンテンツ生成、要約作成、QAチャットボットなど、多様な用途に使用されています。

基盤モデルは大規模なデータを用いて訓練されており、この工程を事前学習(Pre-training)と呼びます。事前学習には大量のラベル無しデータや大規模なコンピューティングリソースが必要になります。

Transformerは2017年に発表されたAIモデルで、昨今の生成AIのベースとなっています。複雑なデータパターン、言語、画像などを理解して生成することができ、例えば、異なる文脈で同じ単語が使われる場合、Transformerはその文脈や位置を理解し、適切に情報を処理することができます。

Transformerモデルはテキストを直接処理するのではなく、テキストはトークン(単語、フレーズ、個々の文字)に分割され、標準化されます。Encoderによりトークンはエンコードされ、Embeddingと呼ばれるn次元のベクトルに変換されることで、機械が理解できる形になります。


Decorderでは、Encoderによって変換されたベクトルデータを受け取り、指示内容に応じた処理をします。例えば、A puppy is to dog as kitten is to ___という文から、puppydogと関連付けて、対応する単語はcatだと予測する、という具合です。

コンテキストは会話の理解において重要です。AIモデルは、同じセッション内でのコンテキストを維持し、それに基づいて応答することができます。例えば、特定の場所についての質問に対する答えを維持し、それに関連する追加の質問に応じることができます。

Module3: Planning a generative AI project

このパートでは生成AIのプロジェクトの進め方がテーマになります。ここではプロジェクトをスコープ定義、モデルの選択、モデルの適応、モデルの使用という4つのステップに分けて解説されます。

まず、最初のステップであるスコープ定義についてです。生成AIプロジェクトにおけるスコープ定義は重要で、顧客の期待、成果の測定方法、成功基準、技術的課題、ビジネス価値、競合他社の状況などを考慮する必要があります。具体的な例として、AIを活用したコーディングアシスタントの導入や、AI搭載のチャットボットやバーチャルアシスタントを使ってコールセンターへの電話件数を減らす、といったものが挙げられます。

スコープを定義したら、次にモデルを選択する必要があります。AIモデルの選択とカスタマイズは、ユースケースとデータに基づいて行われます。一般的なタスクには基盤モデルをそのまま使用し、カスタマイズは最小限にします。しかし、特定のユースケースでは固有のレスポンスが必要となるため、基盤モデルをファインチューニングします。これには追加の計算リソースが必要ですが、ゼロからモデルを作成するよりは少なく済みます。

モデルの適応には、一般的にプロンプトエンジニアリングとファインチューニングの二つの手法があります。プロンプトエンジニアリングは、プロンプトやインプットを調整することで、ニーズに合ったアウトプットを出す方法です。例えば、ただ1つのインプットを提供するのではなく、インプットの一部として2、3の例を挙げることで、望ましいアウトプットの方向に導く、という具合です。
一方、ファインチューニングは、基盤モデルを更に特化したモデルにするための手法で、高品質なラベル付きデータが必要です。大規模なモデルのファインチューニングはコストがかさむため、早い段階で適切なモデルを選択することが重要です。

AIモデルの使用には、利用目的の整理、成功基準の設定、責任あるAIへの対応、継続的なモニタリングの計画が必要です。また、データ収集とフィードバックループの活用、ユーザーフィードバックの収集といったアクションも重要です。

ここまで生成AIとその利点について触れてきましたが、潜在的なリスクや問題が発生する可能性を認識することも重要です。特に、公平性とプライバシーを考慮する必要があります。具体的には、公平性の観点では特定のグループに対して不利な結果をもたらすことを避けたり、プライバシーでは顧客情報などが漏れないようにする必要があります。
リスクへの対応としては、有害なコンテンツ生成の制限、生成されたコンテンツに対する正当性の検証、知的財産権やプライバシーの保護についての啓蒙、データの暗号化などがあります。また、生成AIの利用は既存の仕事のやり方に少なからず影響を及ぼします。そのため、組織に生成AIを導入する際は従業員と適切な対話を取ることも必要です。

Module4: Building a generative AI–ready organization

ここからは、生成AIに対応した組織を構築する、というテーマになります。
生成AIに対応した組織を構築するためには、人々、プロセス、カルチャー、ガバナンスの重要性を理解して計画を進めることが必要です。

そして、まずは組織のリーダー層から行動することが重要です。変化が従業員に与える影響を理解し、従業員にトレーニングとリソースを提供し、準備状況をチェックします。

従業員に対しては教育が特に重要です。従業員は生成AIに対して抵抗感や潜在的な恐怖を感じるかもしれません。生成AIが何であるかを説明し、従業員を教育し、そして仕事の変化に対する懸念を解消します。従業員が生成AIとは何かを理解し、生成AIがもたらすメリットを実感すれば、多くの場合組織に大きな利益をもたらします。

また、従業員からのフィードバックを奨励し、業務における懸念やアイディアを共有するよう促しましょう。受け取った意見に基づいて計画を立て、フィードバックループを繰り返すことで、組織に生成AIが定着するように働きかけます。
そして、継続的な学習の重要性を強調し、新しい使用例やアイデアを思いつく従業員を評価することで、より多くのユースケースが提供されるようになります。

最後に、成功に向けてのポイントとして以下が触れられました。

  • AWSのエキスパートなど、生成AIの専門家に協力してもらう
  • 高品質のデータの収集と準備に重点を置く
  • 生成AIのガバナンスモデルを確立する
    • システムの責任範囲と説明責任を明確に定義し、ユーザーが意見を出せるプロセスを用意する
    • プライバシー、公平性、透明性などの倫理原則とガイドラインに従って設計する

おわりに

Generative AI for decision-makers(TNC214)のセッションレポートをお届けしました。

生成AIの基礎的な話から可能性と利点、また、生成AIを組織で活用するための具体的なステップと注意点が詳しく解説されており、非常に参考になりました。生成AIについての理解を深め、組織に導入するための実践的なガイドラインとなっていると思います。特に実際に生成AIの導入を検討している経営層やマネジメント層には有用な内容になっていると思いますので、ご興味のある方は公開されている動画の方もぜひご覧ください。

ネクストモードについて

ネクストモード株式会社は東日本電信電話株式会社とクラスメソッド株式会社で設立したクラウドカンパニーです。「クラウドであたらしい働き方を」というメッセージを掲げ、さまざまなクラウド技術や製品を組み合わせて企業の働き方の当たり前を変えていくことを目指しています。クラウドやSaaSのご利用に関してお困りごとがあれば、ネクストモードまでぜひお問い合わせください。

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